シックハウス症候群をご存知でしょうか。
シックハウス症候群とは、新築の住居で起こる 頭痛・喉の痛みなどの症状が現れる健康不良の呼び名です。建材に含まれる揮発性の化学物質がシックハウスの原因とされ、新築で使われる建材に関心が高まりました。
シックハウスという言葉が世に知れ渡ったのは、日本では、2000年前後でした。それまで、健康不良の原因が、家にあるという認識がなかったため、原因不明で困っていた方には、朗報だったと思います。
実は、スウェーデンでは、1970年にはもう、シックハウス対策が行われていました。
どうして、スウェーデンとシックハウスの話?と思いでしょうが、日本がたどった「カビ」に対する対策と スウェーデンがとった「カビ」に対する対策の違いに注目して欲しいからなんです。
スウェーデンでは、北欧の寒い国で暖房が欠かせず、室内と室外の温度差が30度以上になります。住宅に断熱材が欠かせない地域です。
ところが、断熱材を使うと 「カビ」が発生しやすくなるのです。壁の内部や窓の結露が 「カビ」の原因となるからです。
そこで、スウェーデンは、断熱材を使っても「カビ」が発生しない施工法を探求しました。
①壁の中のカビ対策・・・・防湿シートの施工
②室内のカビ対策・・・・空気をかき混ぜる(換気システムの導入)
そして、上記①・②の精度を高めるために、気密性を重視しました。
こうして、スエーデンは、高気密・高断熱住宅が発達しました。続いて、ドイツやカナダなど、高気密・高断熱住宅が広まりました。比較的、家の性能が雑だとされる北米でも、防湿シートの施工は、中間検査で義務化されているほどです。(アメリカの建材は、雑でした・・・日本と感覚が違うようです。)
1970年頃の日本の対策はどうでしょう?日本においても 断熱材を壁の中に施工することが多くなってきました。そうなると、やはり「カビ」が発生するようになりました。
日本のとった対策は、防カビ剤の添加された新建材の開発です。
スウェーデンに比べ、外気との温度差も少ないですし、部屋全体を暖める生活スタイルでもないので、これで十分でした。対策となる費用も少なくて済みます。(ちなみに北海道では、早くから高気密・高断熱住宅が一般化し、本州とは違った流れです。寒いですもんね・・・)
しかし、だんだんと問題になってきたのが、「カビ」の救世主である新建材だったのです。
新建材に含まれる揮発性の化学物質により室内の空気が汚染され、健康被害が問題になってきました。シックハウス症候群です。
今では、シックハウス対策規制法が成立、防蟻剤として使用されていたクロルピリホスは、使用禁止となりました。接着剤として使用が多かった毒性の強いホルムアルデヒドは、規制対象とされています。
また各建材メーカーも 揮発性化学物質の排除が進みました。厚生省が、指針値として示した他の化学物質に対処しているようです。
私は、シックハウス症候群ではないのですが、化学物質で頭痛がすることもあります。店舗の改装直後の臭いは苦手で避けているのですが、最近の新築住宅では、臭いを感じることがほとんどありません。昔に比べ、住宅に対しては、対策が進んでいると思います。
もちろん、シックハウス対策規制法が守られた住宅が、揮発性化学物質がまったくなわけではありません。敏感な方は、より揮発性化学物質のない建材を選ぶ必要があります。
ただ、健康住宅 イコール 自然素材を使えばOK には疑問があるのです。
自然素材を使うには、「カビ」の発生しない 室内環境作りが重要です。
健康住宅を語る上で、スウェーデンの辿っってきたシックハウス対策は、原因の根本的解決方法でした。日本の場合、携帯電話のガラパゴス化といい、技術力があるだけに、根本の解決からそれる傾向があるのでしょうか?
スウェーデンでは、現在も自然素材がたっぷり使われています。日本は、自然素材はクレームになるので、進化した(揮発性物質の少ない)新建材が主流です。スウェーデンの「カビ」に対する対応を考えると「カビ」の悪玉を自然素材のせいにするのは あまりに悲しい・・。
自然素材を選ぶときは、結露が発生しない施工方法が大切です。
防湿シートを施工し内部結露を防ぐか、自然素材だけで呼吸する壁を構成します。(リフォームでは、特に下地に注意する必要がります。)
ぜひ、自然素材をショールームで体感していただけたらと思います。使い方のコツが解かれば、決して使いにくい建材ではありません。
そして、「室内環境」に気を配って 自然素材とお付き合いいただければ、新建材では味わえない 豊かな空間 が出現しますよ!
私は、杉の無垢板や塗り壁・板張りが大好きです。五感を触発する本物の素材で、なんだか落ち着く感覚をデザインに組み込めたらと思います。